おかわりもらった

元気な証拠を残します。

子供が産まれました

出産予定日から1週間が過ぎた。診察で問題なく子供はすくすく育っているけどお腹から出てくる気配が無いので入院して陣痛を促進することになった。
入院して嫁は朝6時半から準備して8時から陣痛促進剤を投与して貰っていた。僕は10時頃に病院の陣痛室に入った。

部屋に入るなり嫁に「管に巻かれて怖いでしょ笑。」と言われた。それから昨日聞いたオードリーのオールナイトニッポンの感想を話したり談笑する余裕があったけど段々と陣痛の感覚が強く短くなっていき、すかさず助産師さんがテニスボールを取り出して肛の門に押し付ける指導をしてくれた。「本当にゴリゴリのテニスボールなんだ。」と思ったら助産師さんが大阪なおみに見えてきたけどそれを言ったら怒られそうだったから黙っていた。
陣痛がどんどん強くなり13時頃に嫁の母親が来て背中をさすってくれていた。嫁はずっと「痛くないよ。大丈夫。」と苦しい顔をしながら唱えていた。自分に言い聞かせているのはもちろんだけど僕や母親やお腹にいる子供にも安心させるような言い方だった。それを感じたらこの人が親になるのはとても素敵なことなんだろうなと思った。

それからお医者さんも何度も来てくれて様子を見てくれたけど15時頃。
帝王切開にしましょうか」と言われた。
ざっくり言うと「お腹の中で赤ちゃんが大きくなって小柄な嫁からは出てこれなくなったんだろう」とのこと。赤ちゃんも嫁も頑張ってくれた。頑張った結果なのだ。僕はもう充分だった。充分感謝が尽きなかった。お腹の子がすくすく育ったのは全部嫁のおかげなのだ。部屋に出産育児の本棚が出来た。自分のストレスは子供の為にケアしていた。手編みのよだれかけやおもちゃが日に日に増えていった。その愛情が全部伝わって育ったんだろう。ただここまで頑張った嫁はどう思うんだろうか。悔しいんじゃないだろうか。先生の説明を聞きながら嫁はずっと声を出して泣いていた。嫁にかけよると先生が「まだ頑張ってみるのも一つの手なので、お母さんの気持ちを一番に考えて下さい。」と言って席を外してくれた。嫁は声にならない声でそれでも力強く第一声「赤ちゃんが一番安全な方法が良い」と言った。帝王切開を先生にお願いした。

それからはあっという間だった。嫁の母親とロビーで嫁の話をしてたら30分もしないで助産師さんが赤ちゃんを連れて出てきた。なんだこの可愛い生き物は?と思いながら抱き上げた。どこから来たんだろうかこの生き物は。もしかして嫁のお腹でもにょもにょ動いていたのは君だったのか。ずっと会いたい会いたいと思っていた子は君だったのか。本当に君で間違いないんだろうか。生まれた瞬間この子を抱いた時の嫁の顔も見て見たかったな。本当にいたんだねお腹の中に。ずっと楽しみにしていたけど正直少しだけ不安だったんだ。ちゃんと出てくるのだろうか、そもそもちゃんと居るんだろうかと。本当に居たんだ。ただただ愛しくて可愛くて柔らかくて脆くて暖かいけどすぐに冷たくなってしまいそうな君とこれから生活ができるのが嬉しくて嬉しくてたまらなかった。きっとこれは愛という感情が湧いて溢れて仕方がなかった。今でも思い出すと溢れてしまう。
「赤ちゃん産まれたら写真みせてね」と周りに言われては「生まれたてはきっと人間じゃないからちゃんと可愛くなったらね」と返していた。けど紛れもなく人間でとてつもなく可愛いかった。顔は真っ赤でよく「酔っ払い」と言われるけど本当に酔っ払いみたいだった。子供を産むのは親のエゴだとやっぱり思うしきっとこれからこの子は色んな感情を覚えてそれでも理解できずに振り回されるんだろうと思う。悲しい思いも沢山するんだろうと思う。それでも子供が欲しいと思った時に嫁と沢山話し合った。子供にとってこれで良かったんだろうか。と正直思うこともある。それでも生まれて来てくれて嬉しくて嬉しくてありがとうありがとうと果てしなく思う。思うとまた溢れてしまう。この子と嫁と家族と友達と一緒に何をしよう。何をして遊ぼう。そんな希望に満ち溢れて仕方がない。親としてどうふるまうべきかどう教育するべきか必死に考えていたけど抱き上げた瞬間に「よーし!!絶対にめちゃめちゃ甘やかせるぞ!!」と思った。「ぽかぽか育って欲しい/ぽかぽか育てるぞ」と思った。顔がほころんでしまう。逆に赤ちゃんに甘やかされているみたいだった。

赤ちゃんは必死に出てこようとしていたみたいでその頑張りの証で頭がうにょーーと伸びていた。なんか身体を張って笑いを取りに来ている感じは嫁を見ているみたいだなと思った。それが凄く面白かった。指を指して笑った。「あれ、うちの子なんですよ。」と言っているみたいに。

それからしばらくして回復室で安静にしている嫁と対面した。5分程度と言われていたので本当に少しだったけど安心しきって力が抜けてだるっとしている嫁を見て「おかえり」と思ったけど変かなと思って言わなかった。でもおかえり。頑張ってくれてありがとう。帰ってきてくれてありがとう。
家に帰る頃には夜になっていてそれでもとても暖かくていい気候だった。カネコアヤノの「愛のままを」を聴きながら帰った「美味しいものを食べな できる限り遊びな 恋をしな 結いた髪の毛が乱れるまでいけ」という歌詞で泣きながら帰った。好きなことをして生きられる力をつけさせたいと思った。振り回されるのならばせめて好きな事で振り回されて欲しいと思った。家に着く直前に急に降り出した暖かくて大粒でどしゃ降りとは言えないけど強い雨の匂いを今日泣いた涙の匂いにしようと思った。
帰ったら出生届の事とか確認しないとなーと思っていたけど家に着くなり糸が切れたように寝てしまった。いつもと変わらないことに幸せを感じていた一日がこれから変化に振り回されることになるんだろうな。想像もつかない。